連日満席の夜の電車

2003年08月25日号

●箱根の夜の風物詩として人気を博している「夜のあじさい電車」をご存知だろうか?


毎年6月中旬頃、
箱根登山鉄道の沿線に、美しくライトアップされたあじさいが咲き乱れる。


人気は定着し、「夜のあじさい電車」は連日満席状態。


この人気電車の歴史を紐解いてみよう。


●ゴールデンウィークには観光客であふれる箱根も、6月という梅雨時期には客足が鈍る。


また、夏休みシーズンになるとファミリー層の宿泊客が増えるのだが、
どうにかして、谷間の6月の低迷を打破したいという思いがあった。


そこで目をつけたのが、箱根登山鉄道から見ることのできる、元々自生しているあじさい。


このあじさいを使って、お客を呼べないだろうか?


ここから、あじさいを使った販促プロジェクトが立ちあがった。


●あじさいは元々自生してあったものの、その数は多くはなかった。


そこで、あじさいのボリュームアップをはかり、植栽運動が開始された。


メンバーは、鉄道社員から集まってきた有志。


5月末に草刈りやツル切りを行い、挿し木をして、あじさいの数を増やしていった。


たまには、蒔いた種をイノシシに食べられてしまうといったこともあった。


しかし、そういった困難を乗り越え、無数のあじさいがライトアップされた。


今から30年前の1973年のことである。


●あじさいは評判になり、客足は順調に伸びていった。


それ以前の利用客が年間約640万人だったのに対し、
80年代には800万人、90年代には遂に1000万人を突破。


最近では景気低迷もあり、約830万人レベルで推移。


しかしながら、6月単月で見れば、ほぼ満席状態が続いているという。


●あじさいは、手入れをしないとすぐに弱ってしまう植物。


ライティングさえも障壁になりかねない。


しかし、社員たちは、30年前から「自分たちで育ててきた商品」という強い思い入れがあるという。


だから、沿線をきれいにし、あじさいを育てていくことは今なお続いている。


世の中、なにがヒット商品となるかわからない。


「電車」と「あじさい」が結びつくことなんて考えもつかない。


しかし、そういったアイデア以前に、売る側がその商品を本当に愛し、大切にしようという心さえあれば、
そこに新しい価値が芽生えるのは当然だろう。


売る商品には強い思い入れを持たなければならない。


売上げや利益だけが目的では、客に感動が伝わらないし、
きっと、売ってる本人も面白くないはず。


現状の商品がそれで満たないのであれば、
自分で考え、わずかでも新しい価値観を付加していく努力をしよう。


きっと、商品をいとおしく思えてくる日がくるはずだ。


【総括】


●「夜のあじさい電車」は、そのネーミングが広報的にも威力を発揮しやすい秀逸なもの。


旅行代理店の商品として「○○とあじさい電車」といった組み合わせもしやすく、人気を博している。


これまで、電車目当ての団体客を乗せた貸切バスが、1日90台も押しかけた日もあったという。


「電車」と「あじさい」のミスマッチがお客の注目をひく。


発売後、商品が一人歩きしてしまいそうなネーミングを心がけたいものだ。

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