高齢化社会におけるビジネスモデル

2003年11月10日号

●今の日本は、高齢化社会へと突き進んでいる。


この状況を見込んで、
シニア世代をターゲットとしたビジネスが多様化してきた。


しかし、実際には多くの企業が、高齢化にともなう経済の変化を真剣には受けとめていない。


「我々の販売する商品はシニア向けではないから」
といった理由だけで、この現象を見過ごしていれば、
いずれ売上げ減につながることは明白だ。


なぜなら、シニア以外の世代の絶対数は間違いなく減っていくのだから。


シニアに目を向けるか、
もしくは、予想できる売上げ減に対する対策を準備するか。


いずれにしても、日本の高齢化現象は避けて通れない社会問題だといえる。


●東京の所沢ニュータウンにある電器店『フジデン』では、
早くから高齢者を直視した販促活動に力を入れている。


力を入れている、というよりも、
入れざるを得ない、という表現がピッタリか。


なぜなら、店舗を構える所沢ニュータウン自体が、
高齢化が急激に進んでいるから。


もともと林だったこの一帯の開発が始まったのは、1970年。


少し前までは、地域住人の多くは、大企業の幹部クラスが多かったのだが、
彼らがリタイアし、最近では高齢地域化しているという。


●また、店の商圏内には大型の家電量販店が進出。


残された道は「高齢者を直視する」ことしかなかったのかもしれない。


そこで同社は、まず手始めに高い所の蛍光灯や電球の交換、
インターネットの接続といった高齢者が苦手とする分野を、
ほぼ原価すれすれ(利益なし)で大々的に告知し、引き受けることにした。


●店は毎週水曜日が休みだが、修理に関しては毎日対応した。


夜遅くでももちろんOK。


店と住居が一緒ということもあり、
迅速に対応できる強みは、大型店には真似出来ないことだろう。


しかし、エリア的には限界もある。


そこで、車で5~6分(半径1.5~2キロメートル内)に絞り、
各戸に「蛍光灯取り替え(工賃)無料!」とうたったチラシを徹底的にポスティング。


店から近いエリアの客を重点的に獲得する作戦に出た。

 
●蛍光灯や電球の交換をほぼ無料で受けていたのでは、
働けども働けども利益は出ないのでは?


この作戦の真の目的は、利益ではなく、客と接することにあった。


電球一個の交換でも100%の笑顔で感謝し、客に接する。


当然、客との接触時間が生まれるわけだから、
そこでコミュニケーションをはかり、絆を築く。


もちろん、他の電化製品の調子なども伺うし、
洗面ユニットなどの高額商品のパンフレットなども手渡す。


押しつけはしないが、接する度にちょっとしたアピールをすることで、
必要なときには声をかけてもらえるという。


それも全て、電球交換の時に芽生えた親近感が後押ししているのは間違いない。


根気のいる作戦だが、
これからの高齢化社会における一つのビジネスモデルなのかもしれない。


【総括】


●販促における基本要素として、
「入口部分の障壁をとりのぞいてあげる」お手本のような事例だ。


客は、最初から高額商品をつきつけられても二の足を踏む。


しかし、安い価格でそういったストレスを払拭することで、
客との接点を持つことができる。


接点ができれば、後は店のファンになってもらえるよう努める。

 
うまくコミュニケーションがとれれば、
高額商品を購入していただける可能性もでてくる。


この方法で気をつけなければならないことは、
これを悪用し、一気に信用を失ってはならないということ。


上お得意様へ、階段を少しずつ昇っていただける気配りが必要となるだろう。

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