良いものをより安く

2003年10月13日号

●ロープライス紳士服チェーンが台頭してきた昨今。


価格帯は3プライス(9800円・19800円・29800円)といった“わかりやすい”ことが、
若者を中心とする消費者にうけている。


私も何度か利用したことがあるが、
店内は清潔感がただよい、価格別に棚分けされているので、いちいち値札を確認する手間が省ける。


ならば、もっと利用性の高いショップは考えられないだろうか?


●紳士服チェーンの主力商品は、やはり何といっても「スーツ」。


シャツやネクタイはあくまで二次的商品となるだろう。


しかし東京にある「メーカーズシャツ鎌倉」は、
そのシャツを専門アイテムとして、
10年前、コンビニの2階に、わずか17坪の店をオープンさせた。


価格帯は、最もわかりやすい4900円のワンプライスだ。


●店は順調に売上げを伸ばし、今では、丸ビルに出店など直営店7店舗のほか、
ネットショップやフランチャイズ制も導入。


今年の売上げは、直営店のみで10億円を越える。


なぜ、シャツだけでそれほど売れるのだろうか?


取り扱いアイテムであるシャツの販売数量は、年間で20万枚を突破するという。


●先にも述べたように、ロープライスチェーンが台頭してきた今では、
4900円均一のシャツ専門店といっても決して珍しくはなくなってきた。


それでも、そこに明確な販売理由とビジョンがあるから、
約75%の割合で客はリピーターとして再来店する。


その理由とビジョンとは?


●まず、価格と品質のバランスを見て「こんなに良いものはない!」とお客が驚けば、
当然のようにその商品を買っていくという。


また、扱う商品群も時代性を反映したものを常に提供することで、
客は安心してリピーターになる。


この要素をふまえた上で「自社生産」を実施しているのだ。


●広く市場に出回っている大量生産のシャツとは違い、
「ここでしか買えない自社生産商品」が4900円であれば、それだけで安値感はある。


この4900円という価格も、1万円で2枚買えるという「求めやすさ」が第一の理由。


同時に、ワンプライス策は大きなコスト削減にもつながるという。


まず値札がいらないし、レジでの打ち間違いもほとんどない。


伝票や棚卸しも省略化できるし、何よりワンプライスだから値下げを求める声が出にくい。


ワンプライス戦略は客のみならず、
販売会社にとっても、メリットの多い商法だと言える。


●「本当に良いものをより安く」よく耳にする言葉だが、
実際に実践できているところがどのくらいあるだろうか?


本当に良いシャツを売れば、職場や酒の席で評判が良かったり、誉められたりする。


ここまでくれば、お客は「店のファン」というよりも「信者」に近い意識を持つという。


【総括】


●不況においてあらゆる商品の値段が下がっているが、
ここに大きな落とし穴があることに気づかなければならない。


値を下げれば、当然なにかしらの生産コストを下げなければならない。


その下げる部分が自社内での努力によるものであれば問題ないが、
そのまま商品の品質低下を招くと、悪循環に陥る。


売れないから値を下げる → 値が下がるから品質を下げる → 品質が下がるからまた売れなくなる


といった具合に。


お客の視点はどこにあるのか?


メーカーズシャツ鎌倉が推進している「こんなに良いもの」が安いことに魅力を感じるのがお客。


「良いものをより安く」


当り前のように使われてきたこのフレーズを、今一度吟味してはいかがだろうか?

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